十日町の歴史と食文化が詰まった「へぎそば」
世界に誇る伝統の味を多くの人に届けたい
株式会社 小嶋屋
―織物の町から生み出された「へぎそば」の歴史

古くから織物の町として栄えてきた新潟県十日町市。上質な麻を生産する気候や風土に恵まれていたことから、長く厳しい冬の仕事として麻織物産業が盛んになりました。その後、絹織物に転換して、日本を代表する織物の一大産地として発展してきた歴史があります。
その織物づくりの工程において、そばの茎を燃やして作った灰汁汁で糸を漂白し、糸に張りを持たせるための糊付けに布海苔(ふのり)が用いられていたのです。

小嶋屋の初代店主である小林重太郎氏が、この布海苔をそばのつなぎに用いて、独特の食感とツルツルとした喉越しを生み出したのが「へぎそば」の始まりです。絹糸の束「おかぜ」をイメージして、「へぎ」という器に美しく盛り込まれたことから、その名が付いたと言われています。地域の風土や伝統文化を取り入れ、先代の努力によって生みだされた「へぎそば」は、今や十日町地方の郷土食の一つとして知られるようになりました。

そして重太郎氏から受け継がれたへぎそばは、二代目店主の時代に、株式会社小鳩屋、小嶋屋総本店、並びに株式会社長岡小嶋屋に分かれ、各々に経営が託されたそうです。源流は同じでありながら、そばの味や風味、サービス、お客様層も異なり、独自の文化が築き上げられてきました。

株式会社小嶋屋は、日本そば専門店として昭和30年に創業。本店である十日町店を皮切りに新潟県内で6店舗を展開しています。地域の人々に愛されてきた伝統の味を受け継ぎ、時代の変遷とともに少しずつ変化を加えながら「食」と「文化」を次代に繋いでいます。

今回の取材では、これからの小嶋屋にも焦点を当てながら、そばへのこだわり、働く従業員への想いをお聞きすることができました。
【安心・安全を追求した国産素材で作る、こだわりのへぎそば】
―小嶋屋3代目の若女将、小林加奈さんにお店のこだわりをお聞きしました。

「私たちは、厳選された食材のみを使ったへぎそばを提供しています。そば粉からつゆまで全て国産のものを使用しています。また製造工程においても、四日町にある工場を新しくして、布海苔に混ざっている細かなごみを手作業で丁寧に取り除くことから始まり、その日に店舗でお出しするそばを全て自社工場で作っています」

小嶋屋はへぎそばの真の美味しさをお客様に味わっていただくことに重きを置いています。そのため素材にとことんこだわり、へぎそば以外のサイドメニューにおいても、新鮮な野菜を使用した天ぷら、地元で採れた山菜の付け合わせや小鉢、食後やお口直しに合うさっぱりした和スイーツなど、へぎそばの美味しさが引き立つメニューを中心に取り揃えています。また、新潟県内の6つの店舗では、季節ごとのメニューをそれぞれ独自に考案したり、ファミリー層が多い場所ではデザートを多めにするなど、周辺環境やお客様層に応じたオリジナリティも大切にしているそうです。
そしてよい食材を最大限活かすために必要なのは、作り手の高い技術です。

「そばは茹で方一つで味や食感が変わってしまいますし、横長の大きな器に一口大ごとに盛られた『手振り』と呼ばれるへぎそば独特の盛り付け方には熟練の技術が必要です。見た目の美しさや、盛り付けから配膳までの提供時間にも気を付けています」

こうした徹底したこだわりでお客様からの信頼を集め、過去には皇室の方がお見えになったこともあったそうです。「お客様にいつも新鮮で美味しいへぎそばを提供していきたい」という想いで、変わらぬ味と品質を守り、お客様から愛されています。
【子供からお年寄りまで皆に愛される日本の味を届ける】
―小嶋屋の今後の展望についてお聞きしました。

「これからは、通販事業により力を入れていきたいと考えています。地域の高齢化や人口減少もありますので、地元だけにとどまらず全国に小嶋屋のそばを展開していきたいですね。そのために工場の生産体制を整えたり、新しいメニューの考案などを進めていく予定です。

たとえば、これまでネット販売の商品は落ち着いたデザインのものが多かったのですが、思い切ってキャッチ―な商品を作りたいと考え、サンリオで大人気のキャラクター、キティちゃんとコラボしたへぎそばを今年11月から販売予定です。新しく入ってきた方には、こうした商品開発にも積極的に携わっていただきたいと考えています」

十日町をイメージした着物姿のキティーちゃんと、へぎそばの鮮やかな若草色が使われたパッケージは、見た目もかわいくポップなデザインで子供たちにも大人気の商品になりそうです。そばは「お年寄りの食べ物」ではなく、子供から大人まで安心して食べられる日本の伝統食。地元で愛される味であることはもちろんのこと、まだへぎそばを食べたことのない県外の方、そして海外からの観光客にも日本の文化として更に広まっていくことでしょう。
【地域の魅力を発信する ~小嶋屋に求められる役割~ 】
毎年、国内外から多くの観光客が訪れるようになった十日町。
「旅が楽しくなる一つの思い出として、小嶋屋のへぎそばを提供したい」と若女将は話します。

「私たちは飲食業でありながら、観光業の一環も担っていると思っています。県外や外国からのお客様も多いですし、取引先のお客様へのおもてなしとして小嶋屋を選んでくださる方も沢山いらっしゃいます。様々なお客様に、見た目でも味でも喜んでいただけるようなへぎそばを提供していきたいです。今後も安心できる小嶋屋のへぎそばをより多くの人に味わっていただきたいですね」
ー最後に小嶋屋で働くことの魅力をお聞きしました。

「一緒に働いている方は皆優しい人ばかりです。今はコロナ禍で難しくなってしまいましたが、以前は社長が社員を引き連れて美味しい料理屋さんや旅館のレストランなどに行って、勉強を兼ねた食事会を開いていて、都内まで足を運ぶこともありました。社員には何でも積極的に任せていきたいですし、ゆくゆくは店長を目指して頑張ってほしいと思います。
土日や祝日の休みが少ないなど敬遠されがちな飲食業ですが、せっかく入ってきてくれた方には、楽しく働けるように工夫していきたいですね。もちろん、まかないには毎日美味しいおそばが食べられますよ」と優しい笑顔を向けてくださった若女将。若女将をはじめ、お店全体の優しく穏やかな雰囲気が、常連のお客様が多い理由の一つなのかも知れません。

伝統の味を守りながら、時代と共に求められる変化を楽しみながら取り入れている小嶋屋。あなたなら、どんなへぎそばを次代に伝えていきたいですか?守るべき伝統と、未来に向けた変革に力を貸してくださる方をお待ちしています。

2020/10/30 取材
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